開催場所:クロスパルにいがた 403 時間: 18: 30-
演目:「ストリートの抵抗と創造の論理- LAの壁画事情を中心に-」
発表者:新津 厚子
要旨:人口の 40%以上がラティーノであるロサンゼルスは、かつて「世界の壁画の中心地
(Mural Capital of the World)」と呼ばれていました。そのため今もなお路上を歩けば、多彩な壁画群が目に留まります。今回のセミナーではロサンゼルスの壁画事情を中心に、メキシコ系アメリカ人が 1960年代の権利主張運動を通じて形成した壁画制作、農業労働者演劇、詩などの豊富な文化を紹介します。それにより強者の論理とは一線を画す抵抗と創造の論理を考察できればと思います。加えてメキシコの「死者の日」をはじめ、発表者が各地で撮影した写真も多く紹介する予定です。ぜひお越し下さい。
実施報告
上記の内容で、ひさびさにナインセミナーを実施しました。内容は発表者の現在の研究テーマであるメキシコ系アメリカ人の文化運動とロサンゼルスの壁画事情についてでした。会場には 20名程度の市民の方々が来てくださいました。中にははじめてこのセミナーに足を運んだという方もいらっしゃいました。
セミナー構成は以下の通りでした。
自己紹介
調査地であるロサンゼルス( Los Angeles、 Los Ángeles、天使たち)について
メキシコ系アメリカ人たちの公民権運動を担った文化のスタイル
ロサンゼルスの壁画事情
想像のホームとしての壁画≒アストラン
「意味のないもの、半端なもの」に意味を与える機知の文化=ラスクアチスモ
壁画がもたらす集団的記憶と想起のあり方
運動と制度のあり方
ロサンゼルスの壁画制作の非合法、合法化の動き
従来のチカーノ文化の問題点 チカーノや壁画を嫌う人もいる!
「ノー」から新しい「イエス」を作る運動文化の仕組み
番外編ーメキシコの現代アート、「死者の日」の様子を少しご覧ください。
上記の内容で、スペイン語の語句を紹介しつつ、他者の想像力をかきたて、共感を呼ぶ表現となる事例として、演劇や詩、バイリンガル新聞(イラスト含む)、スローガン、壁画のアートをみていきました。それによって、日常的な言葉使いで非日常的なことを行う力 、あいまいなものに具体的なイメージを与える力と いったアートの持つ多様な力を考察していきました。そして、それらの表現が、低賃金で働き、人種差別に苦しんだ(現在も苦しむ)メキシコ系労働者の権利主張運動を成功へと導く鍵となったことにも触れました。このようにして、否定から肯定へ、「ノー」から新しい「イエス」を作る運動文化のあり方について少しずつ迫っていきました。
VIDEO
スペイン語、英語と日本語で、ナインメンバーと Yo soy Joaquín の詩を朗読を試みるほか、色鮮やかな LAの壁画群やメキシコの死者の日など、歴史ある日常のアートをスクリーンに映し出すなど、ユニークで多彩なセミナー構成ができたと自己評価しています。
会場の皆さんも丁寧に聞いてくださり、和やかな様子で、いつものように発表者のたどたどしい言語運用能力に対しても柔軟に対応してくれました。
きて頂いた皆さんの好意に 甘えずに、これからも努力して言葉の力をみがいていきたいです。
次はどなたにバトンタッチできるでしょうか。次回のナインセミナーもどうぞお楽しみに。
文責 新津 厚子